曳家とは?
概要
曳家とは、主に土地区画整理事業、歴史的建造物の維持保存、既存の建築物を別の場所へ移動する場合に活用される建築工法です。
一般的には、以下の手順にて曳家が行われます。
1、ジャッキ等を用いての建造物の上昇
2、枕木、レール等を用いた移動ルートの設置
3、建造物の移動、回転
曳家工~家が動く~
日本においては、東京中央郵便局、靖国神社鳥居、総理大臣公邸、弘前城天守等が過去曳家を行っています。
五月女建設では今まで国指定重要文化財旧篠原邸や国指定有形文化財真岡高校記念館、作新学院校舎を始めとして、数多くの文化財や木造の一般住宅、鉄骨造倉庫、鉄筋コンクリート造の建築物、大谷石蔵、石塀、車庫、銅像、神社本殿、神社の鳥居、鐘楼堂などなど重量建築物から計量建築物までを曳家してきました。
五月女建設の伝統と実績
曳家の主な用途
曳家(ひきや)の主な用途は、建物を解体せずにそのまま移動させることで、様々な目的を達成することです。
- 土地区画整理事業での活用
- 土地区画整理事業において、道路拡張や新しい都市計画に合わせて建物を移動させる必要がある場合に曳家が利用されます。これにより、既存の建物を保存しながら都市開発を進めることができます。
- 歴史的建造物や文化財の保存
- 貴重な歴史的建造物や文化財を保存するために、元の場所から安全な場所へ移動させる際に曳家技術が活用されます。また土台や柱が腐食してしまった場合の復旧・交換作業にも曳家の技術が利用されます。これにより、建物の価値を損なうことなく保護することが可能となります。
- 日当たりの改善
- 建物の向きを変えることで日当たりを改善したい場合にも曳家が利用されます。特に住宅や商業施設において、快適性や省エネルギー性の向上を目的として行われることがあります。
- 敷地の有効利用
- 建物を移動して駐車場等を作るなど、既存建物を店舗利用への転用をする際に敷地を有効活用するための手段として曳家技術が用いられます。過去には建物を上げて、一階部分を駐車場にした例もあります。これにより、限られた土地を最大限に活用することができます。
- 都市再開発プロジェクト
- 大規模な都市再開発プロジェクトにおいて、歴史的価値のある建物や重要な構造物を保存しながら新しい都市計画を実現するために曳家技術が使用されます。
- 災害復興や防災対策
- 液状化現象による地盤沈下や台風・大雨による床下浸水・床上浸水、地震による家の傾きなど、災害後の復興過程や、将来の災害に備えた防災対策として、建物を安全な場所に移動させるために曳家が活用されることがあります。
曳家は、建物を解体せずに移動させることができるため、建築物の価値を保ちながら様々な都市計画や保存のニーズに対応することができます。また、環境負荷の低減や資源の有効活用にも貢献する技術として、現代社会において重要な役割を果たしています。
曳家の歴史
曳家の歴史と起源
曳家(ひきや)は、建物や重量物をそのままの状態で移動させる日本の伝統的な建築工法です。その起源は非常に古く、紀元前のエジプトやストーンヘンジの建設にまで遡ることができます。曳家技術は、古代から人々が大きな石を運ぶために「テコ」や「コロ」の原理を利用していたことに起因しています。
古代: 曳家技術の原点は、5000年前の古代エジプト文明に見られます。この時期、人々は大きな石を運ぶために木製のソリやレールを使用していました。
5世紀から7世紀: 日本においても、古墳を作るために木製の大型ソリ(修羅)が使われていたことが確認されています。特に、大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳から出土された修羅はVないしY字型の形状をしたものが発掘されています。二股に分かれている先端部を舟の舳先のように前方へ向け、これに切り出した石を乗せ、ロープで曳いていたようです。
戦国時代~江戸時代: 加藤清正の石曳きは、名古屋城の天守閣の石垣工事において、巨石を運搬するために行われました。清正は、修羅と呼ばれる木製の大型そりに石を乗せ、自ら石の上に立ち、木遣り唄を歌いながら音頭を取ったと伝えられています。清正の石曳きは、単なる工事というより、地域社会を巻き込んだ大規模なイベントでもありました 。名古屋城の石垣には、今でも加藤清正自身の名前が刻まれた銘文石が残っており、彼のリーダーシップや人柄を反映しています。清正は、自らの名だけでなく、工事に従事した家臣たちの名前も共に刻むことで、その労を称えました。
さらに江戸時代に曳家業は「算段師」と呼ばれる職業によって発展しました。算段師は重量物を運搬する専門家であり、彼らの技術が現在の曳家工事の基礎となりました。算段師は、建物はもちろん、石や巨樹など、運べるものは何でも運ぶことができる専門家でした。現代の重量鳶(おもにとび)のように、大型機械や橋桁のような重量物の移動と設置を行う技術を持っていました。そして算段師は、都市の発展や変化に伴う建物の移動や再配置において重要な役割を果たしていたようです。特に、火災や災害後の復興作業において、その技術が重宝されたと考えられます。
明治時代: 明治時代に入ると、江戸時代から続く算段師という職業から、曳家を専門とする職人が登場しました。明治時代は日本の近代化が急速に進んだ時期であり、都市の再開発や新しい建築様式の導入などにより、建物の移動や再配置の必要性が高まりました。これにより、曳家技術への需要が増加し、業界の発展につながりました。この時期、曳家技術も進歩を遂げました。江戸時代までは主に人力や神楽や麒麟など簡単な道具を使用していましたが、明治時代には新しい機械や技術が導入され始めました。例えば、建物を移動する際の道として用いるレールや、ローラー、建物を上げる際に用いるジャーナル式ジャッキ、油圧式ジャッキなどの使用が一般的になり始めたと考えられます。この時期、特に戦後復興期から高度経済成長期にかけて曳家工事が盛んになり、多くの歴史的建物や文化財が移設されました。江戸時代からの伝統的技術を基礎としながら、新しい機械や方法を取り入れ、より効率的で大規模な建物の移動を可能にしていきました。この時期の発展が、その後の曳家技術の基盤となり、現代にまで続く日本の独特な建築技術として確立されていったのです。
現代: 現代の曳家技術は、伝統的な手法を基盤としながら、最新の技術を取り入れて大きく進化しています。
- 精密な制御システム
- 現代の曳家技術では、建物を移動させる際にミリ単位での調整が可能になっています。これは、高度なジャッキシステムと電子制御技術の組み合わせによるものです。建物の高低レベルや歪みを正確に測定し、リアルタイムで調整することで、建物への負荷を最小限に抑えながら安全に移動させることができます。
- 高性能な機器の導入
- ジャッキやウィンチなどの機器が大幅に進化し、より大きな重量を扱えるようになりました。これにより、木造建築だけでなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の重量建築物など、さまざまな構造の建物を移動させることが可能になっています。
- シミュレーション
- 曳家工事の前に、コンピューターを使用して移動のシミュレーションを行うことができるようになりました。これにより、潜在的な問題を事前に特定し、最適な移動経路や工法を計画することができます。
- 環境への配慮
- 現代の曳家技術は、環境への影響を最小限に抑えることも重視しています。解体工事と比較して、建物をそのまま移動させることで廃棄物を大幅に削減し、資源の有効活用にも貢献しています。
- 多様な移動方法
- 従来の水平移動だけでなく、垂直移動や回転移動など、より複雑な移動方法が可能になっています。これにより、狭い都市空間や複雑な地形においても、効率的に建物を移動させることができます。
これらの技術進化により、現代の曳家は単なる建物の移動にとどまらず、都市計画や歴史的建造物の保存、災害対策など、幅広い分野で活用されるようになっています。今後も技術の進歩とともに、さらなる発展が期待されてます。
日本の曳家の特徴
曳家(ひきや)は、建物をそのままの状態で移動させる日本の伝統的な建築工法です。この技術は古代から現代まで受け継がれ、進化を続けています。
- 建物の保存と移動
- 曳家の最大の特徴は、建物を解体せずにそのまま移動できることです。これにより、歴史的建造物や文化財を保存しながら、必要に応じて場所を変更することが可能になります。この方法は、建物の価値を損なうことなく、都市計画や土地利用の変更に対応できる柔軟性を提供します。
- 高度な技術と精密な作業
- 現代の曳家技術は、ジャッキやウィンチなどの最新機器を使用して、建物をミリ単位で調整しながら移動させることができます。この精密な作業により、建物への損傷を最小限に抑えつつ、安全に移動させることが可能になっています。
- 多様な適用範囲
- 曳家は、木造建築だけでなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、さまざまな構造の建物に適用できます。小規模な住宅から大規模な商業施設まで、幅広い建物タイプに対応可能です。
- 環境への配慮
- 建物を解体せずに移動させることで、解体工事よりも環境への負荷が少ないとされています。これは、建設廃棄物の削減や資源の有効活用につながる持続可能な方法として評価されています。
- 歴史的価値の保存
-
- 曳家技術は、歴史的建造物や文化財の保存に大きく貢献しています。例えば、赤坂プリンスホテル旧館や東京中央郵便局など、多くの重要な建築物が曳家によって保存されてきました。
- 都市計画への適応
- 土地区画整理事業や都市再開発において、曳家は重要な役割を果たしています。建物を移動させることで、道路拡張や公共施設の建設などの都市計画に柔軟に対応することができます1。
- 経済性と実用性
- 建物を解体・再建築するよりも、曳家を選択することで、時間とコストを節約できる場合があります。特に、建物の残存価値が高い場合や、迅速な移動が必要な場合に有効です。
曳家は、日本の建築文化と技術の結晶として、現代社会のニーズに応えながら、伝統的な価値観を保持し続けています。この技術は、都市の発展と歴史的遺産の保存の両立を可能にする重要な手段として、今後も進化し続けることが期待されています。
曳家の費用
曳家工事にかかる費用は、建物の規模や構造、移動距離、地形などによって大きく異なります。一般的には新築費用の4~7割程度とされていますが、具体的には以下のような費用が含まれます
曳家に関連する費用の種類
- 解体処分費用:
- 建物の周囲にある工事支障物を解体する費用です。庭木の処分費用や塀やカーポートなどを解体する費用がここに含まれます。
- 曳家工事費用:
- 建物を移動するための費用です。費用の要因については下記「曳家工事に影響を与える要因」を参考下さい
- 設備工事費用:
- 建物に接続されている電気・ガス・水道などの切断、復旧作業の費用です。
- リフォーム工事費用(必要な場合):
- 外壁の塗替えやキッチン、トイレの入替え、壁紙の張替え工事、断熱リフォーム等が含まれます。
- 外構工事費用:
- 曳家工事をする際に撤去した外構(お庭)の新設工事です。
- 建築確認申請料:
- 曳家工事は建築基準法の「新築(曳移転)」または「移転」に含まれるため、特殊な場合を除いて建築確認申請費用が必要になります。
- 地盤調査・地盤改良費:
- 曳家した後の建物が不同沈下の被害に遭わないための費用です。地盤改良費に関しては必要な場合とそうでない場合があり、一般的に区画整理事業では市が負担するケースがあります。
曳家工事に影響を与える要因
- 建物の規模と重量:
- 大きく重い建物ほど、移動に必要な機材や人員が増えるため、費用が高くなる傾向があります。
- 移動距離:
- 移動距離が長くなるほど、工事期間が延び、必要な設備も増えるため、費用が上昇します。
- 建物の構造と状態:
- 木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、建物の構造によって工法が異なり、費用に影響します。また、建物の老朽化の程度も考慮する必要があります。
- 地形と周辺環境:
- 移動経路の地形や周辺の建物、道路状況などによっては、特別な準備や対策が必要となり、費用が増加する可能性があります。
- 法的手続きと許可:
- 曳家工事には様々な法的手続きや許可が必要となる場合があり、これらの手続きにかかる費用も考慮する必要があります。
- 工事の時期と緊急性:
- 急を要する場合や、特定の時期に工事を行う必要がある場合は、追加の費用がかかる可能性があります。
- 専門技術と機材:
- 曳家工事には高度な専門技術と特殊な機材が必要です。現在では、ジャッキやウィンチなどの機器を使用して、建物をミリ単位で調整しながら移動させることが可能になっています。大型の建築物になると構造計算や特殊な機材が必要になるため、費用が上がります。
曳家工事の費用を正確に把握するためには、専門の業者に相談し、具体的な建物と条件に基づいた見積もりを取ることが不可欠です。また、曳家工事は単に建物を移動させるだけでなく、歴史的建造物や文化財の保存、土地の有効利用など、様々な目的で行われることがあり、その目的によっても費用が変わってくる可能性があります。
参考記事:
曳家の技術を用いた工事いろいろ
その他にも曳家の技術を用いた工事があります。
曳家+耐震基礎改修工事
曳家技術を利用した耐震改修工事の施工事例|栃木県真岡市 真岡高校記念館(国指定有形文化財)|
-
- 経年劣化や地震、地盤沈下で傷んだ基礎を耐震基準に準じた基礎に作り変えます。
曳家+免振改修工事
曳家技術を利用した免震改修工事の施工事例|栃木県鹿沼市 2階建木造住宅|
-
- 建物を上げて、地震の影響を1/8以下に抑える免震ダンパー構造を取付けます。
沈下修正+腐食部修繕(根継ぎ)工事
曳家技術を利用した根継ぎ工事の施工事例|栃木県那須烏山市 平屋建古民家|
-
- 土台や柱の腐食により沈下してしまった建物の高さを修正し、新たな基礎や土台、柱を取付けます。
古民家改修工事
曳家技術を利用した梁・柱・土台の改修工事の施工事例|茨城県筑西市 木造平屋建古民家|
-
- 経年劣化により、亀裂・ひび割れの入ってしまった梁や腐食してしまった土台・柱など建物の部材を曳家の技術を使って交換します。
嵩上げ工事(床下浸水・床上浸水対策)
曳家技術を利用した嵩上げ工事の施工事例|栃木県宇都宮市 木造二階建住宅|
-
- 台風・大雨の影響で床下浸水・床上浸水してしまった建物を被災時の最高水位以上に嵩上げし、安心な住まいを築きます。
その他
-
- 近年では砂防ダムの移動、魚道の沈下修正、ビルの解体、橋梁の沈下修正、あしかがフラワーパークで有名な大藤の移動など様々な工事に曳家の技術が活かされています。
曳家の課題
曳家工事において最も難しい部分は、以下のいくつかの要素に集約されます。
- 建物の構造保全
- 曳家工事では、建物全体を移動させる必要があるため、その過程で建物の構造を損なわないようにすることが最大の課題です。特に、下腰工法における基礎の切断箇所の復旧作業や揚げ家工における水平の維持、既存建物の沈下部分や水平歪みの修正作業は非常に繊細で、建物の構造に悪影響を与えないよう細心の注意が必要です。
- 重量分散と安定性の確保
- 建物を持ち上げ、移動させる際には、建物の重量を均等に分散させ、安定性を保つことが極めて重要です。これには高度な技術と経験が必要とされ、ジャッキの配置や使用方法、施工管理方法に細心の注意を払う必要があります。また特に業者によっては使用するジャッキの台数が少ないことで十分な重量分散ができずに建物にひび割れを起してしまうケースも見られますので、注意が必要です。
- 精密な移動と位置調整
- 建物を目的地まで移動させる過程では、ミリ単位の精度で位置を調整する必要があります。これには最新の測量技術と高度な操作技術が要求されます。特に、大型の建造物や歴史的建造物の場合、わずかなずれも許されないため、極めて高い精度が求められます。
- 環境要因への対応
- 屋外で行われる工事であるため、風や雨などの気象条件、地盤の状態、周辺の建物や構造物との関係など、様々な環境要因に対応しながら作業を進める必要があります。特に雨の多い時期の曳家工事は地耐力の著しい低下への対応能力が問われることから工事の難易度が大きく左右されます。
- 法規制への対応
- 曳家工事には様々な法規制が適用されるため、これらの規制に適合しながら工事を進めることも大きな課題となります。特に、区画整理地域にある建築物、また歴史的建造物や文化財の場合、保存に関する厳しい規制に従う必要があります。
これらの難しい部分を克服するためには、高度な専門知識と豊富な経験、最新の技術と専用機器の活用が不可欠です。曳家工事は、建築技術の粋を集めた極めて複雑な作業であり、その難しさゆえに、専門の技術者によって慎重に計画され、実行しなくてはいけません。
五月女建設での
様々な曳家工事
家屋移転
「道路拡張や区画整理があるのだが住み慣れた家をこのまま使いたい」「歴史的価値のある建物を残したい」「新築ほどお金をかけずに家を移転したい」「建物を移動して敷地を有効に使いたい」「家族と過ごした大切な思い出のある家を壊したくない」等、お客様の要望に応えるのが曳家工法です。
当社では移転時に基礎コンクリートを切り離して、新しい基礎コンクリートの上に建物を移設する「下腰工法」、また建物と基礎コンクリートを共に移転する「基礎共工法」、神社仏閣や古民家、木造棟門など日本古来の建築物を移転する「腰付移動工法」など多彩かつ熟練の技術で曳家工事を行っています。
下腰工法の施工事例①|木造2階建店舗兼住宅
家屋移転のポイント
思い出の残る家をそのまま残せる。
道路拡張、区画整理に伴う家の移転では補償金そのままでも満足の工事が行えます。
新規の住宅ローン等を払わずに今までの生活が維持できる。
沈下修正工事
軟弱地盤、地下水のくみ上げ、地震、液状化、盛土における転圧不足などによる地盤沈下・建物の不等沈下の修正を行います。
ジャッキを用いて、沈下部分の水平修復を行い、鋼管杭の圧入、耐圧版の作成等により、沈下防止を行います。
アンダーピニング工法の施工事例|木造二階建住宅
耐圧版工法(根継ぎ)の施工事例|古民家
沈下修正工事のポイント
建物、コンクリート基礎を壊すことなく、小規模工事によって水平修復を行える。
立て直し、基礎の打ち直しに比べ、大幅のコストダウンが見込める。
建物に住んだままの工事ができる。
嵩上げ工事
既存の建物や構造物を持ち上げて、その基礎や地盤を高くする工事です。この工法は、特にゲリラ豪雨・大雨・洪水による床下浸水・床上浸水のリスクが高い地域で、建物の基礎、もしくは土台を嵩上げして水没しない安心の家に改修工事します。その他、土台や柱の腐食・虫食い部分の交換、基礎部分の耐震補強、構造の改造などの用途として用いられる工法です。
現在、嵩上げ工事は戸建て住宅・マンション・アパートなどの集合住宅・擁壁・ダム・堤防など様々な建築物や工作物に利用される工法です。特に近年では、気候変動による豪雨の増加に伴い、住宅の浸水対策として再注目されています。
嵩上げ工事の施工事例|木造二階建住宅
嵩上げ工事のポイント
新築や増改築と比較して低コストで施工できるため、経済的な負担が軽減される。
工事中も居住空間を維持できるため、仮住まいへの移動が不要。
湿気や虫の被害で傷んでしまった土台や柱を新しく入替え、構造を強化することができる。
歴史的建造物の移転・改修
歴史的・文化的価値のある建造物も曳家工法で移転・改修が可能です。身近なところでは、大谷石蔵や、土蔵、古民家など。
また、公共の歴史的建造物も移転、改修工事を行っています。文化的財産やお客様の記憶に残る大切な財産も曳家工事で後世まで残すことができます。
免震改修
新築の基礎に免震を組み込んだり、既存の住宅や歴史的建造物を、また建物のみでなく、家族・家財・歴史や文化を守る免震構造(レトロフィット工法)の建物に改修工事いたします。
免震工事は、特に地震が頻発する日本において重要な役割を果たしている地震の揺れを建物に直接伝えないようにするための技術です。この工法では、建物と地面の間に免震装置を設置し、地震のエネルギーを吸収または減少させることで、建物の揺れを軽減します。新築の基礎に免震を組み込んだり、既存の住宅を、建物のみでなく、家族・家財・歴史や文化を守れる最新の免震構造の建物に改修工事いたします。
また、歴史的建造物は、歴史的・文化的価値により、耐震構造に修繕できない場合でも、曳家移転工事と組み合わせることで、実際の地震の時にも建物にほとんど負担のかからない免震工法を用いて、移転後の新たな基礎に移転をすることができます。
免震工事では、主に「アイソレータ」と「ダンパー」という二つの装置が使用されます。アイソレータは建物を支えつつ、地震時には水平方向に動くことで揺れを減速させます。ダンパーは地震のエネルギーを吸収し、建物の揺れをさらに抑える役割を果たします。これにより地震時に建物が受けるダメージが大幅に減少し、建物の倒壊・損壊リスクを低減します。また免振装置は家具の転倒や食器類の破損も防ぐことができ、地震による恐怖感を軽減し、居住者が安心して生活できる環境を提供します。
免震工事は耐震や制震と比較して費用が高くなる傾向があり、また、施工できる業者も限られているため、選択肢が限られるというデメリットがありますが、地震から価値の高い建物を守るための有効な手段として、日本でも広く採用されています。
地震力を1/6~1/8に抑制することによって構造物の破壊を防止する免震工事は、現在、東京・上野の国立西洋美術館(ル・コルビュジエ設計)、国立西洋美術館前庭の地獄門(オーギュスト・ロダン作)、鎌倉の大仏、旧首相官邸(首相公邸) などに使われるもっとも有効とされる地震対策構造です。
当社では免震工事の第一人者企業、THKと協力し工事を行っています。
免震工事のポイント
地震の振動自体を抑える。
建物だけでなく、家財道具など家の中にあるものへの振動が減る。
曳家工事と組み合わせることで、外壁、内壁を取り外すことなく、既設の建物にも免震装置を取り付けることが出来る。
その他構造物の移転
建物だけでなく、記念碑や石塔などの石造物、塀や門や鳥居、樹木、送電線の鉄塔や外付きのエレベーターまで様々なものを曳家することができます。
その他構造物の移転のポイント
敷地内に新しい建物を建てる際、敷地の有効利用ができる
工場内の機械の配置を移動することで、新規の機械設置や導線の効率化ができる。
歴史的価値のある記念碑、構造物を壊さずに移動することができる。