伝統と実績
創業の背景
五月女建設(旧五月女組)が創業した1902年(明治35年)は、日本の近代化が急速に進展した重要な年でした。
1902年(明治35年)は明治時代の中期にあたり、政治分野において国語調査委員会の官制公布や、自由民権運動の影響により、政府が国会開設を約束するなど、変革への期待感が高まった年でした。
また経済分野では「殖産興業」政策の下、重工業や軽工業の発展が促進され、鉄道網の整備や工業化が進み、近代的な経済基盤が形成されていきました。
社会分野では逓信省が初めて官製絵はがきを発売し、通信手段の発展を促進し、教育制度の整備が進み、新たな学校や教育機関が設立されるなど、国民の教育水準向上に寄与しました。また10月19日、早稲田大学の開校式が行われ、日本初の私立大学として教育制度に新たな一歩を刻みました。
文化分野においては、洋風の服装や食事が一般化し、庶民の生活様式が大きく変わりました。特に「牛鍋」などの牛肉料理が流行しました。文明開化の影響により、西洋文化が日本社会に浸透し始めました。
そして、国際関係においては1月30日、日英同盟が締結されました。これは日本にとって初の軍事同盟であり、国際的な地位を向上させる重要な一歩となりました。この同盟は、アジアにおけるロシアの膨張に対抗するための重要な戦略で、アメリカ合衆国と日本との間での外交関係が強化される動きがありました。
9月28日、「足尾台風」が日本を襲い、関東地方は未曾有の大暴風雨に見舞われました。特に栃木県の日光市周辺の足尾銅山では山崩れ、男体山では土砂崩れ、中禅寺湖の津波により死者34人、不明170人の甚大な被害をもたらしました。
栃木県鹿沼市に生まれ、東京浅草の地にて請負師をしていた五月女 常吉(そうとめ つねきち)は、この年に鹿沼市府所町に五月女組を興したのです。
創業と初期の活動
五月女建設の歴史は、1902年に五月女常吉が鹿沼市府所町に五月女組を興したことから始まります。創業当初から、公共施設や民間工事を手がけ、地域の工事整備に尽力してきました。
大正時代の発展
1924年(大正13年)6月16日、初代社長である五月女常吉の下で、五月女組として九州阿蘇山、北海道大雪山などの全国にわたり索道工事などをを手掛けました。また飛島組の東京神田橋梁工事などを請け負い、この工事は、「橋梁の五月女」として全国に対し会社の技術力と信頼性を示す重要な布石となりました。
戦後の再建と成長
1950年4月1日、二代目社長五月女良雄の基で、五月女組は「五月女建設株式会社」として法人化され、新たな一歩を踏み出しました。この時期から、会社は更なる成長を遂げ、宇都宮支社を構えるようになり、より大規模な工事にも取り組むようになりました。公共工事においては栃木県知事表彰を25回受賞しました。
文化財保護への貢献
五月女建設は、歴史的建造物の保存と移転に特に力を入れてきました。
- 国指定重要文化財「旧篠原邸住宅」:土蔵造の主屋と新蔵は江戸時代以来の豪商であった宇都宮市の代表的旧家・篠原家が1895年に建てた。1930年に国鉄宇都宮駅のロータリー改修工事の際に移転した。
施工事例|旧篠原邸住宅(国指定重要文化財・市指定有形文化財) 歴史的建造物
- 国指定有形文化財「真岡高校記念館」耐震改修工事:1903年に建設された旧本館で、1968年に現在の北門横に移築された近代洋風建築の建物入母屋造・総2階建の「質実剛健」の校風をよく示している旧本館。曳家技術による高揚げをしたまま鉄筋基礎コンクリートを築造した。
施工事例|耐震改修工事 真岡高校記念館(国指定有形文化財)
- 国指定有形文化財「旧下小代駅舎」移転工事:木造平屋建・切妻造平入の駅舎建築であるなどの移転工事
- 数多くの神社仏閣の移転・修復工事:
- 大谷石蔵、深岩石蔵の移転:約1500万年前の海底火山の噴火でできた凝灰岩の大谷石や深岩石などを用いた石蔵など、近年日本遺産にも認定された歴史的価値の高い建築物の移転工事を手がけ、文化財保護に大きく貢献してきました。
技術革新と専門性の確立
近年、五月女建設は曳家工事において北関東地域でNo.1の技術と機器を有するまでに成長しました。特に、レンドージャッキ🄬やレンドーローラー🄬などの専門機器を導入し、土木施工管理技士、建築施工管理技士、曳家技術士を始めとした有資格者による精密な測量技術や曳家技術が、重量建築物の移動から文化財級の木造建築まで高精度な工事を可能にしています。
現在の取り組みと未来への展望
2020年6月、5代目代表五月女紀士への交代を機に、五月女建設は「仕事を通じての社員の幸せや生きがい、人としての成長を大切にしたWell-Being企業」という新たなビジョンを掲げ、社員一人ひとりの充実感を重視した企業文化の構築に積極的に取り組んでいます。同時に、近江商人の「三方良し」の理念にも深く根差し、顧客、地域社会、そして自社、すべてのステークホルダーにとっての「良し」を徹底的に追求する姿勢を大切にしています。
また、現代社会のニーズに合わせて、タブレット端末やGoogle Workspace などデジタルツールの導入を積極的に推進しています。これにより、業務効率の向上だけでなく、部署や役職を超えた活発なコミュニケーション、さらには時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の実現など、様々な効果が期待されています。
Google Workspace 活用ストーリー(株式会社マツヤMPlus事業部)
このような変革と伝統的な価値観の融合を通じて、社員がよりいきいきと働き、成長できる、そして、関わる全ての人々にとっての「良し」を実現できる持続可能な企業を目指しています。
私たちは、120年以上の歴史と、5人の社長、200人を超える職人たちが紡いできた技術を現代まで引き継ぎ、今もなお革新されている技術を取り込みながら日々新たな技術を研鑽しています。
宇都宮ブランド 旧篠原家住宅(国指定重要文化財・市指定有形文化財)
You Tube【宇都宮市】旧篠原家住宅(宇都宮市役所)
Wikipedia 旧篠原家住宅
文化遺産オンライン(文化庁) 真岡高校記念館
文化遺産オンライン(文化庁) 旧東武鉄道下小代駅舎