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建物の配置間違い・越境トラブル完全ガイド:原因から解決策、曳家工事まで専門家が徹底解説

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建物の配置間違い・越境トラブル完全ガイド:原因から解決策、曳家工事まで専門家が徹底解説

1. はじめに – 「まさか我が家が?」建物の配置間違い、他人事ではありません

越境トラブル 建物「自分の家が、まさか設計図通りに建っていないなんて…」「お隣の土地にはみ出しているかもしれない…」建物の完成後や、何年も住み慣れた後に、このような事実が発覚することは、想像を絶するほどの衝撃と不安をもたらします。建物の配置間違いや隣地への越境は、単なる「うっかりミス」では済まされない、深刻な法的・経済的問題に発展する可能性を秘めています。

本記事では、この「建物の配置間違い」および「越境建築」と呼ばれる問題について、その発生原因から法的な側面、そして具体的な解決策に至るまで、専門家の視点から包括的に解説します。特に、建物を解体せずに移動させる「曳家(ひきや)」という技術が、どのようにしてこれらの問題に対する有効な選択肢となり得るのか、曳家専門工事業者である五月女建設の知見も交えながら、詳しくご紹介します。

建物の配置に関するトラブルは、施主様にとって大きな精神的負担となるだけでなく、近隣関係にも影響を及ぼしかねません。このような状況に直面した際に、冷静に、そして適切に対処するための一助となれば幸いです。不動産における「越境」とは、建物やその一部(例えば、屋根の庇や外壁、基礎など)が、隣接する土地の境界線を越えて設置されている状態を指します 。たとえ数センチのはみ出しであっても、これが原因で紛争が生じ、最悪の場合、建物の撤去や高額な賠償金の支払いを命じられるケースも存在するため、決して軽視できません 。 

多くの場合、施主様は建築の専門家を信頼して工事を任せています。そのため、配置間違いが発覚した際の衝撃は計り知れず、法的な手続きや専門用語の壁に直面し、途方に暮れてしまうことも少なくありません。この記事が、そのような方々にとって、問題解決への道筋を照らす灯台の役割を果たせることを願っています。

<もくじ>

2. なぜ起こる?建物の配置間違い・越境の主な原因

建物の配置間違いや越境は、一体なぜ発生してしまうのでしょうか。多くの場合、単一の原因ではなく、設計から施工に至る複数の段階での小さなミスや確認不足が積み重なって生じます。主な原因を以下に分類して解説します。

配置間違い 越境 トラブル

  • 測量時のミス:

    • 土地の初期測量の不正確さ: 建築予定地の境界がそもそも正確に測量されていなかった場合、その後の全ての計画が狂ってしまいます。
    • 現場での建物配置(墨出し)の誤り: 設計図に基づいて建物の正確な位置を地面に示す「墨出し」作業でのミスは、直接的な配置間違いにつながります。
    • 古い、または校正されていない測量機器の使用: 測量機器(トータルステーションなど)も精密機械であり、定期的な校正が必要です。古い機器や校正が不適切な機器を使用すると、距離や角度の測定に誤差が生じる可能性があります 。特に、古いトータルステーションでは、光源の劣化により距離測定の精度が低下することが指摘されています 。
    • 測量データの読み取り・転記ミス: 人為的なミスも無視できません。測量結果の読み間違いや、図面への転記ミスなどが原因となることもあります。
    • 現場状況や既存の基準点の確認不足: 例えば、測量機器を設置する際の水平確認が不十分だったために、擁壁の高さが3cmずれてしまい、大規模な手戻り工事が発生した事例もあります 。
  • 設計上のミス:

    • 図面作成時の誤り: 建築士が作成する設計図において、建物と敷地境界線との位置関係が誤って記載されている場合があります。
    • 法規制の誤解釈: 建築基準法上の斜線制限や建ぺい率、容積率、あるいは民法上の隣地境界線からの離隔距離など、各種法規制の解釈を誤った設計が原因となることもあります 。
  • 工事中の不正確さ:

    • 設計図からの逸脱: 施工業者が、何らかの理由で設計図通りに工事を行わなかった場合。
    • 現場管理・品質管理の不足: 現場監督によるチェック体制が不十分であったり、作業員の技術不足や不注意が原因となることもあります。
    • 設計チームと施工チーム間のコミュニケーション不足: 設計の意図が正確に施工側に伝わっていなかったり、工事中の変更事項が適切に共有されていなかったりする場合に問題が生じやすくなります。
  • 境界紛争・不明確な境界:

    • 既存の境界線の曖昧さ: 隣地との境界がそもそも明確に定まっていない、あるいは境界標が失われている場合、誤った認識のまま工事が進んでしまうことがあります。
    • 工事開始前の境界未確認: 工事を始める前に、土地家屋調査士などによる正確な境界確認が行われていないと、越境のリスクが高まります。

これらの原因からもわかるように、建物の配置は測量、設計、施工という一連のプロセスにおける正確性と、関係者間の密な連携に大きく依存しています。測量技術が進歩し、高度な機器が用いられるようになった現代においても、それらを扱う人間の専門知識、注意力、そして機器自体の適切なメンテナンスが不可欠です 。一つの小さな見落としや誤りが、最終的に大きな配置間違いという結果を引き起こす可能性があるのです。しかし逆に言えば、これらの原因の多くは、各段階での十分な注意と確認、そして明確なコミュニケーションによって未然に防ぐことが可能であるとも言えます。

3. 「建物の配置間違い」と「越境」– 知っておくべき法律の基礎知識

建物の配置に関する問題は、大きく「配置間違い」と「越境」の二つの側面から考える必要があり、それぞれ建築基準法(公法)と民法(私法)という異なる法律が関わってきます。これらの法律の基本的な知識を押さえておくことは、問題を理解し、適切に対処する上で非常に重要です。越境建築 建築基準法と配置 民法と境界

A. 越境建築 (えっきょうけんちく)

越境建築とは、建物本体やその一部(例えば、屋根の庇、バルコニー、出窓、外壁、さらには地下の基礎など)が、敷地の境界線を越えて隣接する他人の土地の上空、地表、または地下に侵入している状態を指します 。これは、隣地所有者の土地所有権を侵害する行為と見なされます 。

B. 建築基準法と配置

建築基準法は、国民の生命、健康、財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準を定めた法律です。建物が自分の敷地内に完全に収まっていたとしても、その配置が建築基準法の規定に違反していれば「配置間違い」となり、法的な問題が生じます。

  • 隣地境界線からの距離(外壁後退): 特定の用途地域(例:第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域など)では、都市計画により、建物の外壁を隣地境界線や道路境界線から一定距離(例:1メートルまたは1.5メートル)後退させなければならないという規制(外壁の後退距離制限)が定められている場合があります 。この目的は、良好な住環境の確保(日照、通風)、防火、避難通路の確保などです 。

  • 高さ制限: 建物の高さに関しても、様々な規制が存在します。

    • 斜線制限: 道路の幅や隣地の状況に応じて、建物の高さを斜めにカットするように制限するものです。主に「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3種類があり、道路や隣地の日照・通風を確保し、圧迫感を和らげることを目的としています 。
    • 絶対高さ制限: 第一種・第二種低層住居専用地域などでは、建物の高さを原則として10メートルまたは12メートル以下に抑えるという絶対的な高さの制限が設けられています 。これは、低層住宅地の良好な環境を保護するためです
    • 日影規制(にちえいきせい・ひかげきせい): 中高層の建物が冬至の日に周囲の敷地に一定時間以上の日影を落とさないように、建物の高さを制限する規制です

 

工事が完了し、検査済証が交付されていたとしても、実際に図面と建物の配置が異なっていれば問題となります。本来、建物の配置を変更する場合は、その変更工事に着手する前に「変更確認申請」の手続きを行い、確認済証の交付を受ける必要があります。工事完了後には、この法的な変更確認申請手続きは行えません 。

C. 民法と境界

民法は、私人間の権利義務関係を規律する法律であり、隣接する土地所有者間の関係(相隣関係)についても規定を設けています。

  • 境界線付近の建築の制限(民法第234条): 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないと定められています 。この「50センチメートル」は、建物の外壁またはそれに準ずる出窓などの突出部分と境界線との最短距離を指し、屋根や庇の先端から垂直に下ろした線と境界線との距離ではないと解釈されています(判例あり) 。この規定に違反して建築しようとする者があるときは、隣地の所有者はその建築を中止させ、または変更させることができます。ただし、建築に着手した時から1年が経過した、または建物が完成した後は、損害賠償の請求のみができるとされています 。この規定の背景には、通風や採光の確保、火災時の延焼防止、建築や修繕時の足場設置スペースの確保といった目的があります。

  • 雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止(民法第218条): 土地の所有者は、直接雨水を隣地に注ぐような構造の屋根その他の工作物を設けてはならないとされています 。

  • 越境した竹木の枝の切除(民法第233条): 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に枝の切除を請求できます。一定の条件下(例:竹木の所有者に切除を催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しない場合、所有者不明の場合、急迫の事情がある場合など)では、土地の所有者が自らその枝を切り取ることが認められるよう法改正も行われています 。これは樹木に関する規定ですが、土地所有権の侵害に対する救済という点で、建物の越境問題にも通じる考え方を示しています。 

このように、建物の配置は建築基準法と民法の両方の規制を受けることになります。例えば、民法の50cmルールはクリアしていても、建築基準法上の外壁後退義務(例:1m)に違反しているというケースも起こり得ます。この二重の法的枠組みを理解することが重要です。また、民法第234条では、建築中であれば変更を求める強い権利がありますが、完成後や着工から1年経過すると損害賠償請求に限定されるため、問題の早期発見と対応がいかに重要であるかがわかります 。これらの法律の条文だけでなく、その背景にある「円滑な社会生活の維持」や「良好な住環境の確保」といった目的を理解することで、なぜこれらの規制が存在するのかがより明確になるでしょう 。

表1: 主な配置間違い・越境に関する法的規制の比較

法律 主な規制/条項 規制内容の概要 主な目的 違反時の主な影響
建築基準法 外壁後退 第一種低層住居専用地域等で外壁を境界から1mまたは1.5m後退 良好な住環境の維持、防火 是正命令の可能性、検査済証不交付リスク
斜線制限(道路・隣地・北側) 道路や隣地の日照・通風確保のため建物の高さを制限 日照・通風確保、圧迫感の軽減 是正命令の可能性、計画通りの建築不可
絶対高さ制限 第一種・第二種低層住居専用地域等で高さを10mまたは12mに制限 低層住宅地の良好な環境保護 是正命令の可能性、計画通りの建築不可
日影規制 中高層建物による日影を一定時間内に制限 周辺居住環境の日照保護 是正命令の可能性、計画通りの建築不可
民法 第234条(境界線付近の建築の制限) 建物を境界線から50cm以上離す 隣地の日照・通風確保、紛争予防 建築中止・変更請求(完成前)、損害賠償請求(完成後)
第218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止) 直接雨水を隣地に注ぐ構造の屋根等を禁止 隣地への雨水による被害防止 損害賠償請求、工作物撤去・改修請求の可能性
第233条(越境した竹木の枝の切除) 隣地から越境した枝の切除請求権、一定条件下で自ら切除可能 自己の土地利用の妨害排除 枝の切除、場合により損害賠償請求

  

この表は、複雑な法規制を整理し、施主様や建築関係者が遵守すべき主要なルールとその影響を理解する一助となることを目的としています。

4. もし配置間違いが発覚したら?関係者の責任と法的措置

建物の配置間違いや越境が発覚した場合、まず問題となるのが「誰の責任か」という点と、「どのような法的手段が取れるのか」という点です。これらは複雑に絡み合うことが多く、専門家による慎重な判断が求められます。

A. 責任の所在

配置間違いの原因によって、責任を負うべき関係者が異なります。

  • 設計者(建築士): 設計図の誤り、法規制の解釈ミス、不正確な測量データに基づく設計などが原因の場合、設計者に責任が問われます 。
  • 施工業者(建設会社・工務店): 施工時のミス、設計図からの逸脱、測量や墨出しの誤りなどが原因の場合、施工業者に責任が生じます 。
  • 元請け・下請けの関係: 施主(発注者)との契約関係においては、たとえ下請け業者のミスが直接の原因であったとしても、原則として元請け業者が施主に対して全ての責任を負います 。元請け業者はその後、下請け業者との契約内容や過失の度合いに応じて、下請け業者に求償(負担分の請求)を行うことになります 。
  • 施主(発注者): 通常、施主は被害者側の立場ですが、専門家のアドバイスに反して無理な要求を押し通した結果、配置間違いが生じたといった極めて例外的なケースでは、施主側の責任が問われる可能性もゼロではありません。

実際には、設計、測量、施工の各段階が複雑に関連しているため、責任の所在を特定するのは容易ではなく、複数の関係者が責任を分担するケースも少なくありません。この「誰の責任か」を巡る問題が、解決を遅らせる一因となることもあります。

B. 法的根拠:契約不適合責任

2020年4月1日に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変わりました 。これは、建物の配置間違いのようなケースにおいて、施主が業者に対して責任を追及する際の中心的な法的根拠となります。 

契約不適合責任とは、引き渡された目的物(この場合は建物)が、種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主(または請負人)が買主(または注文者)に対して負う責任のことです。建物の配置が契約図面と異なる、あるいは建築基準法や民法の規定に違反している場合、それは「契約の内容に適合しない」状態と言えます。この「隠れた」瑕疵である必要はなく、契約内容と照らして不適合であれば責任を問える点が、以前の瑕疵担保責任との大きな違いの一つです 。 

契約不適合責任に基づき、施主は以下のような権利を行使できます 。 

  • 追完請求(修補請求): 建物の修補や是正工事(例:一部解体・再構築、曳家による移動など)を求めることができます 。
  • 代金減額請求: 追完請求にもかかわらず業者が是正を行わない場合や、是正が不可能な場合に、不適合の程度に応じて代金の減額を求めることができます 。
  • 損害賠償請求: 配置間違いによって被った損害(例:是正工事期間中の仮住まい費用、不動産価値の低下、弁護士費用など)の賠償を請求できます 。
  • 契約の解除: 不適合の程度が重大で、契約の目的を達成できない場合に契約を解除できますが、建物が完成している場合は、その不適合が社会通念に照らして軽微でない場合に限られます 。

注意すべき期間制限: 施主は、建物の種類または品質に関する契約不適合を知った時から1年以内に、その旨を業者に通知しなければ、上記の権利(追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除)を行使できなくなる可能性があります(民法566条) 。この「1年以内の通知」は非常に重要であり、配置間違いに気づいたら速やかに行動を起こす必要があります。ただし、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、引渡しから10年間の契約不適合責任(同法では「瑕疵担保責任」の用語が使われますが、内容は契約不適合責任と同様)が定められています 。

なお、変更確認申請が必要な配置変更であったにもかかわらず、その手続きが行われていない場合、その申請手数料等は、当然ながら施主ではなく、責任を負うべき請負業者側が負担すべきものと考えられます 。

C. 不法行為責任

契約関係にない第三者(例えば隣地の所有者)が配置間違いや越境によって損害を受けた場合、あるいは建物の基本的な安全性を損なうような重大な設計ミスや施工ミスがあった場合には、不法行為として設計者や施工業者に対して直接損害賠償を請求できる可能性もあります 。

D. 対応ステップと法的措置

配置間違いが発覚した場合、以下のようなステップで対応を進めるのが一般的です。

  1. 専門家への相談: まずは、建築紛争に詳しい弁護士、建築士、土地家屋調査士などの専門家に相談し、状況の正確な把握とアドバイスを求めます。
  2. 施工業者・設計者との協議: 契約不適合の事実を通知し、是正方法や費用負担について協議を行います 。客観的な損害額を算定した上で、具体的な要求を提示することが重要です。
  3. 民事調停: 当事者間の話し合いで解決しない場合、裁判所の調停委員が仲介役となり、合意による解決を目指す民事調停を申し立てることができます 。
  4. 建設工事紛争審査会: 国土交通省や各都道府県に設置されている建設工事紛争審査会は、あっせん、調停、仲裁により建築紛争の解決を図る専門機関です 。
  5. 訴訟: 上記の方法でも解決に至らない場合は、最終手段として裁判所に訴訟を提起することになります 。

 

いずれの手段を取るにしても、早期の段階から弁護士などの専門家のサポートを得ることが、適切な権利行使と紛争の円滑な解決につながります。特に、契約不適合責任の追及は法的な知識が不可欠であり、1年以内の通知義務など、注意すべき点も多いため、迅速な対応が求められます。

5. 裁判になったらどうなる?実際の判例から学ぶ教訓

当事者間の協議や調停で解決に至らず、建物の配置間違いや越境問題が裁判にまで発展した場合、どのような判断が下されるのでしょうか。実際の判例は、具体的な状況に応じて様々ですが、いくつかの傾向と教訓を読み取ることができます。

裁判所の判断は、主に以下のいずれか、またはこれらの組み合わせとなることが多いです。

  • 是正命令: 越境部分の撤去や、建築基準法違反の状態を是正するための工事を命じる判決。ただし、越境がごくわずかで、撤去にかかる費用が著しく高額である場合などには、権利の濫用であるとして撤去請求が認められないこともあります 。
  • 損害賠償: 是正工事費用、不動産価値の低下分、一時的な立ち退き費用、精神的苦痛に対する慰謝料などの金銭的賠償を命じる判決 。
  • 和解: 訴訟の途中であっても、裁判所の仲介のもとで和解が成立することも少なくありません。和解の内容は、金銭支払い、一部是正、将来的な取り決め(例:少額の土地使用料を支払うことで現状の越境を容認する覚書を交わすなど )など多岐にわたります。 

実際の裁判事例から見えること

不動産取引や建築紛争に関する判例データベース(RETIOなど)には、越境や配置間違いに関連する事例が多数掲載されています。例えば、以下のようなケースが参考になります。

  • ブロック塀の越境と損害賠償(東京地裁 平成25年1月31日判決): 中古住宅の買主が、敷地の擁壁の不備に加え、ブロック塀が隣地に越境しているなどの瑕疵があったとして、売主および仲介業者に損害賠償を求めた事案です。裁判所は売主の瑕疵担保責任(現行法では契約不適合責任に相当)および仲介業者の債務不履行責任を認め、買主の請求の一部を認容しました 。この判例は、越境が法的に責任を問われる瑕疵となり得ること、そして売主だけでなく、説明義務を怠った仲介業者も責任を負う可能性があることを示しています。

  • 越境部分の撤去と権利濫用: 別の事例では、ブロック塀の越境がわずか4mm~6mm程度であるのに対し、その撤去費用が12万8,000円かかる場合、被越境者にとっての不利益が小さいにもかかわらず、越境者に過大な負担を強いることになるとして、撤去請求が権利の濫用にあたり許されないと判断されたケースがあります 。これは、裁判所が常に機械的に撤去を命じるわけではなく、双方の利益や社会経済的な損失を考慮して判断することを示しています 。

    境界確認交渉における不誠実な対応(大阪高裁 平成9年3月18日判決): 人家密集地域での建築において、隣地所有者の生活利益を侵害しないよう配慮すべき義務があり、境界線からの距離保持に関して合理的な理由なく隣地所有者との交渉に応じないことは、誠実交渉義務に違反し、不法行為責任を負うとされた事例があります 。これは、単に法規を守るだけでなく、隣人との良好な関係構築の努力も重要であることを示唆しています。

    越境の事実不告知と損害賠償(東京地裁 平成30年1月31日判決): 土地の買主が、売主側の媒介業者が越境の事実を説明しなかったことなどを理由に損害賠償を請求した事案では、他の理由による少額の慰謝料のみが認められました 。このケースでは越境そのものに対する大きな賠償は認められませんでしたが、一般論として、不動産取引において重要な事実の不告知は責任問題に発展し得ます。

裁判にかかる費用と時間

訴訟には多大な費用と時間がかかることを覚悟しなければなりません。主な費用としては、弁護士費用(着手金、成功報酬)、裁判所に納める印紙代や郵便切手代、そして証拠収集のための測量費用(境界確定測量には数十万円以上かかることもあります )などが挙げられます。また、解決までに1年以上、複雑な事案では数年を要することも珍しくありません 。

裁判から学ぶべきこと

これらの事例から、いくつかの重要な点が浮かび上がります。 第一に、裁判所は、権利侵害の事実だけでなく、是正にかかる費用や双方の事情を総合的に考慮して、バランスの取れた解決を目指す傾向があるということです 。必ずしも「少しでもはみ出していれば即撤去」という結論になるわけではありません。 第二に、正確な測量図や契約書、交渉経緯の記録など、客観的な証拠が極めて重要になるということです。証拠がなければ、有利な主張も認められにくくなります。 第三に、訴訟は最終手段であり、可能であれば協議や和解による解決が望ましいということです。金銭的な解決(解決金や土地使用料の支払いなど )も、現実的な選択肢の一つとして検討されます。

建物の配置間違いや越境問題は、法的な側面だけでなく、感情的な対立も絡みやすいため、専門家のアドバイスを受けながら、冷静かつ戦略的に対応を進めることが肝要です。

6. 配置間違いをどう直す?主な修正方法とその比較

建物の配置間違いや越境が確認された場合、その修正方法は一つではありません。問題の状況、関係者の意向、費用、建物の構造などを総合的に考慮し、最適な方法を選択する必要があります。主な修正方法とその特徴を比較してみましょう。

A. 現状容認と金銭解決

越境の程度がごくわずかで、建物の機能や安全性に大きな支障がなく、かつ物理的な修正が非常に困難または不経済である場合、隣地所有者との合意のもとで現状を容認し、代わりに金銭(解決金や将来の土地使用料など)を支払うことで解決を図る方法です 。この場合、後々の紛争を避けるために、合意内容を明確にした覚書や合意書を作成することが不可欠です。

  • メリット: 物理的な工事を伴わないため、比較的早期に、かつ低コストで解決できる可能性があります。
  • デメリット: 根本的な物理的解決ではないため、将来的に土地を売却する際などに問題が再燃する可能性が残ります。また、隣地所有者の合意が大前提となります。

B. 部分的な解体・修正

建物の一部(例:越境している庇、バルコニー、壁の一部など)のみを解体・修正する方法です。

  • メリット: 全面的な解体・再建築に比べて費用を抑えられ、建物本体を維持できる可能性があります。
  • デメリット: 建物の構造によっては部分的な修正が困難な場合があり、修正箇所によっては建物の強度や外観に影響が出ることがあります。また、越境部分の解体費用も、範囲や構造によっては高額になることがあります(例えば、ブロック塀の一部撤去でも十数万円かかる事例があります )。費用負担は原則として原因を作った側となります 。

C. 全面的な解体と再建築

配置間違いや越境の程度が著しく、部分的な修正では対応できない場合や、建物が法規に大きく違反していて使用継続が困難な場合に選択される、最も抜本的な方法です。

  • メリット: 問題を根本から解消し、法規に適合した建物を再建築できます。
  • デメリット: 費用が最も高額になり、工事期間も長期にわたります。また、解体に伴う廃材処理の問題も生じます。

 

D. 曳家(ひきや)

建物を解体せずにそのままジャッキアップし、正しい位置へ移動させる専門技術です。この方法は次項で詳しく解説しますが、配置間違いの修正において非常に有効な選択肢となり得ます。

  • メリット: 解体・再建築に比べて費用を大幅に抑えられる可能性があり、工期も短縮できます。既存の建物を活かせるため、愛着のある家を維持したい場合に適しています。
  • デメリット: 専門的な技術と経験が必要であり、敷地の状況(移動スペース、地盤など)によっては適用が難しい場合があります。

E. 土地の売買・分筆

越境されている側の土地所有者が、越境されている部分の土地を越境している側に売却する、あるいは越境している側が隣地全体を買い取ることで解決する方法です。土地の分筆が必要になる場合もあります。

  • メリット: 物理的な越境状態を法的に解消できます。
  • デメリット: 隣地所有者の合意が不可欠であり、土地の価格交渉や測量、登記費用などが発生します。また、分筆によって土地の形状や利用価値が変わる可能性もあります。

樹木の枝や根の越境であれば比較的除去が容易ですが、建物や塀となると、その修正は格段に複雑になります 。どの方法を選択するにしても、まずは専門家(弁護士、建築士、土地家屋調査士など)に相談し、法的な問題点、技術的な実現可能性、費用対効果などを十分に検討することが重要です。場合によっては、調停や裁判外紛争処理(ADR)などの第三者を介した話し合いも有効な手段となります 。

表2: 建物の配置間違いの主な修正方法比較

修正方法 概要 主なメリット 主なデメリット・注意点 推定費用範囲 (目安) 主な検討事項
現状容認と金銭解決 越境を認め、金銭で解決。覚書作成。 紛争の早期解決、費用の低減の可能性 根本的解決ではない、将来的な問題の可能性、隣地所有者の合意必須 低~中 越境の程度、隣地所有者との関係、合意内容の明確化
部分的な解体・修正 越境部分のみを解体・改修。 全面解体より低コスト、建物維持の可能性 建物の構造による制約、強度・外観への影響、費用負担の問題 中~高 越境の範囲と構造、技術的実現可能性、費用対効果
全面的な解体と再建築 既存建物を解体し、正しい位置に再建築。 問題の根本的解決、法規適合 費用が最も高額、工期が長期、廃材処理 非常に高 経済的負担、代替住居の確保、再建築の法的制約
土地の売買・分筆 越境部分の土地を売買、または隣地全体を買取。 物理的な越境状態の法的解消 隣地所有者の合意必須、土地価格交渉、測量・登記費用、土地形状・利用価値の変化 変動(土地価格による) 隣地所有者の意向、土地の評価額、関連法規
曳家(ひきや) 建物を解体せず、そのまま移動。 (詳細は次章) 解体・再建築より低コスト・短期の可能性、既存建物活用 専門技術要、敷地条件の制約、建物の状態による適用可否 中~高 建物の構造・重量、移動距離・経路、地盤状況、専門業者の選定

 

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7. 曳家(ひきや)工事という選択肢 – 五月女建設が提案する解決策

建物の配置間違いや越境という困難な問題に直面した際、解体や再建築といった大掛かりな手段を考える前に、ぜひ検討していただきたいのが「曳家(ひきや)」という専門技術です。曳家工事は、建物をそのままの姿で、安全かつ正確に移動させることで、配置の問題を根本から解決できる可能性があります。

A. 曳家とは?

曳家とは、文字通り「家を曳く(ひく)」ことで、建物や構造物を解体せずに、そのままの状態で別の場所へ移動させる建築工法です 。道路拡張や土地区画整理事業に伴う建物移転、敷地の有効活用、あるいは水害対策としての高台移転など、様々な目的で利用されてきました 。近年では、歴史的建造物や文化財を保存するために曳家技術が用いられることも多く、その価値が再認識されています 。建物の配置間違いや越境問題の修正においても、この曳家技術は非常に有効な手段となり得ます。

B. 曳家工事のメリット・デメリット

曳家工事には、他の修正方法と比較して多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も存在します。基礎ごと移動 メリット・デメリット

  • メリット:

    • コスト削減: 一般的に、同規模の建物を建て替える費用の約1/3~2/3程度、あるいは総工費で比較すると新築の4~7割程度のコストで済むことが多いとされています 。特に近年の建築資材の高騰や2025年の建築基準法改正による新築コストの上昇を考慮すると、既存建物を活かす曳家の経済的メリットはさらに大きくなっています 。
    • 工期短縮: 建て替えに比べて工期が大幅に短縮できる場合があります 。
    • 環境負荷の低減: 解体に伴う産業廃棄物の発生を最小限に抑えられ、環境に優しい工法です 。 
    • 既存建物の維持: 思い入れのある家や、まだ十分に使える建物をそのままの形で残すことができます。
    • 生活への影響を最小限に: 工事の進め方によっては、工事中も住み慣れた家での生活を継続できる場合や、仮住まいの期間を短縮できる可能性があります 。
    • 付加価値の向上: 建物の移動と同時に、基礎の補強や修繕、地盤改良、あるいは建物の嵩上げ(かさあげ)による浸水対策なども行うことができ、建物の耐久性や安全性を向上させることが可能です 。
    • 固定資産税: 新築に比べて、工事後の固定資産税が安くなる可能性があります 。 
  • デメリット・注意点:

    • 専門技術の必要性: 高度な専門知識、技術、経験、そして専用の機材が必要であり、信頼できる専門業者を選ぶことが極めて重要です。
    • 敷地条件の制約: 建物を移動させるための十分なスペースや、重機が進入できる通路が必要です。また、地盤の状態によっては追加の対策が必要になることもあります。
    • 建物への負荷: 経験の浅い業者が施工した場合や、建物の状態が著しく悪い場合には、移動中に建物が損傷するリスクもゼロではありません 。
    • 基礎工事: 移動先には新たに基礎を設ける必要があり、その費用も考慮しなければなりません。
    • 各種保証への影響: 既存の地盤保証や建物のメーカー保証などが、曳家工事によって影響を受ける(失効する)可能性があります。この点については、事前に業者と十分に確認し、適切な対応をとることが重要です 。  

C. 曳家工事の主な工法(五月女建設の専門性)

曳家工事にはいくつかの工法があり、建物の構造や状態、移動条件などに応じて最適なものが選択されます。五月女建設のような専門業者は、これらの工法を熟知し、状況に合わせた最良の提案を行います。

  • 姿曳移動工法(下腰工法 しもごしこうほう): 建物の土台の下に鋼材(H形鋼など)を差し込み、その鋼材で建物全体の荷重を受けてジャッキアップし、移動させる方法です 。主に在来工法の木造住宅で、土台がしっかりしている場合に用いられます。

    • メリット: 比較的安価で、壁などを傷つけずに工事を進められることが多いです。床下での作業が中心となるため、生活への支障を抑えやすいです 。
    • デメリット: 新しい基礎に建物を降ろす際、鋼材を通していた部分の基礎に開口部(欠損部)ができます。この部分の補強を適切に行わないと基礎の強度が低下する恐れがあるため、専門的な知識と技術が必要です 。
  • 基礎共工法(きそともこうほう): 建物の基礎ごと、一体として移動させる工法です 。鉄筋コンクリート造(RC造)、重量鉄骨造、ツーバイフォー工法のような壁構造の建物、あるいはハウスメーカーの軽量鉄骨住宅など、基礎と建物の一体性が重要な場合に適しています。

    • メリット: 建物本体への影響を最小限に抑えられ、新築時の耐震性などの性能を維持しやすいです。場合によっては家財道具を移動させずに済むこともあります 。新築時の地震保険や地盤保証などが継続できる可能性も高まります 。
    • デメリット: 他の工法に比べて重量が大きくなるため、より高度な技術と多くの資材、手間が必要となり、費用も高くなる傾向があります。地盤沈下のリスク管理もより重要になります 。
  • 腰付移動工法(上腰工法 うわごしこうほう): 建物の土台と床組の間、あるいは柱に直接鋼材や角材を取り付け、そこから建物の荷重を受けて移動させる方法です 。神社仏閣のように土台がない建物や、土台が腐朽している建物、比較的小さな重量物や鉄骨倉庫の移動に適しています。

    • メリット: 腐食した土台の交換と同時に曳家を行うことができます。歴史的建造物の保存にも有効です。
    • デメリット: 一般の木造住宅の場合、壁の一部を取り壊す必要がある場合があります。柱に荷重をかけるため、緊結方法など高度な技術が求められます 。

D. 曳家工事の手順(一般的な流れ)曳家 工事の流れ 五月女建設

  1. 現地調査・計画: 建物の構造、状態、周辺環境、移動経路などを詳細に調査し、最適な工法と詳細な計画を立案します 。
  2. 準備工事: 建物の周囲を掘削し、ジャッキやレールを設置するためのスペースを確保します。必要に応じて、建物内外の補強を行います。
  3. ジャッキアップ: 専用のジャッキを使用し、建物を慎重に持ち上げます(縁切り) 。
  4. 移動装置の設置: 建物の下にレールやローラー、コロなどの移動装置を設置します 。
  5. 移動: ウインチや油圧ジャッキなどを用いて、建物を計画された位置までゆっくりと水平に移動させます。回転させることも可能です 。
  6. ジャッキダウン・据付: 移動先の新しい基礎の上に、建物を正確に降ろし、固定します 。
  7. 復旧工事: 配管・配線の再接続、外構工事、内装の補修などを行い、工事完了となります 。

 

E. 曳家工事の費用新築と曳家にかかる費用の比率やウッドショック前後、建築基準法改正前後での価格の推移についてわかりやすいグラフィックレコーディングでまとめている画像

曳家工事の費用は、建物の大きさや構造、重量、移動距離、回転の有無、敷地の状況、選択する工法、基礎工事の内容など、多くの要因によって変動します 。 一般的には、同じ建物を建て替える費用の1/4~1/2程度 、あるいは付帯工事を含めた総費用で新築費用の4~7割程度が目安とされています 。例えば、一般的な木造2階建て住宅(延床面積約38坪)を20メートル移動させる場合の曳家工事単体の費用相場は約500万円程度という情報もありますが、これに解体、設備、基礎、外構などの付帯工事費が別途必要になります 。

2025年建築基準法改正の影響と曳家の経済合理性: 2025年に施行される改正建築基準法では、省エネ基準への適合義務化や構造計算の厳格化(4号特例の縮小)などにより、新築木造住宅の建築コストが約7.5%上昇すると見込まれています 。例えば、延床面積約120㎡の新築木造住宅の場合、改正前の費用が約4,985万円だったものが、改正後は約5,359万円になるとの試算もあります 。 これに対し、曳家工事は既存の建物を活用するため、これらの新基準対応に伴う直接的なコスト増の影響を受けにくいと考えられます。曳家工事自体の費用上昇率は約5.0%程度と推定されており、相対的に新築よりも曳家のコストメリットがさらに高まる可能性があります 。この経済合理性の高まりは、配置間違いの修正だけでなく、様々な理由で建物の移設を考える方々にとって、曳家をより魅力的な選択肢とするでしょう。

F. 五月女建設の曳家工事

五月女建設では、「できるだけ安く届けたい」という思いと、「30年後も安心できる嘘のない工事をしたい」という信念のもと、お客様一人ひとりの状況とご要望に寄り添った価格設定と高品質な施工を心掛けています 。経験豊富なスタッフによる効率的な作業計画、建物の状態に合わせた最適な資材・工法の選定、そして何よりもお客様との丁寧なコミュニケーションを通じて、ご納得いただける曳家工事を提供しています。 お見積もりは詳細かつ明瞭に行い、お客様がご納得されない追加料金は一切請求いたしません 。地元の気候や地盤を熟知しているからこそ可能な、最適な施工計画をご提案できるのも強みの一つです 。 建物の配置間違いという予期せぬ事態に直面されたお客様の不安を少しでも軽減し、大切な住まいを守るお手伝いをさせていただくことが、私たちの使命であると考えています。

表3: 曳家工事の主な工法と特徴(五月女建設の専門性)

工法名 工法の概要 主なメリット(技術的・施主様視点) 主なデメリット・注意点(技術的・施主様視点) 適した建物・状況 保証等への影響
姿曳移動工法 (下腰工法) 土台下に鋼材を入れ移動 比較的安価、工期短縮の可能性、壁面を傷つけにくい、生活への支障少 新基礎に欠損部が生じ適切な補強が必須、アンカー緊結に注意、メーカー認定基礎の場合適用不可の可能性 在来工法の木造住宅、土台が健全な建物 基礎欠損部の適切な補強が強度維持に重要。保証への影響はケースバイケースで要確認。
基礎共工法 基礎ごと建物を移動 建物性能維持、大臣認定建物対応可、荷物そのまま移動可、給排水管同時移動可、新築時保証引継ぎ可能性高 比較的高価、専門技術・大型資材要、工期が長くなる傾向、地盤沈下リスク管理がより重要 RC造、2×4、ハウスメーカー住宅、基礎と一体性が重要な建物 新築時の保証(地盤・建物)を引き継げる可能性が高い。専門業者による適切な施工が前提。
腰付移動工法 (上腰工法) 柱や土台と床の間に鋼材を緊結し移動 腐食した土台の交換可能、歴史的建造物対応可、比較的安価・短期の可能性 柱への緊結は高度な技術要、一般住宅では壁の取り壊しが必要な場合あり 土台がない神社仏閣、土台が腐食している建物 建物の状態と工事内容により判断。専門業者との綿密な打ち合わせが不可欠。

  

この表は、曳家工事の各工法の特徴をまとめたものです。どの工法が最適かは、個々の建物の状況やお客様のご要望によって異なります。五月女建設では、詳細な現地調査に基づき、最適な工法をご提案させていただきます。

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8. 配置間違いを防ぐために – 施主ができること、知っておくべきこと

建物の配置間違いは、一度発生するとその修正に多大な費用と労力、そして精神的な負担を伴います。したがって、何よりもまず「予防」が重要です。施主様自身が建築プロセスに関心を持ち、いくつかの重要なポイントを押さえておくことで、リスクを大幅に軽減することができます。

A. 契約前の確認事項

  • 信頼できる専門家の選定: 設計を依頼する建築士、測量を行う土地家屋調査士、そして工事を請け負う建設会社は、実績と評判を十分に調査し、信頼できる専門家を選びましょう。過去の施工例や顧客の声、保有資格などを確認することが重要です。
  • 契約内容の精査: 請負契約書や設計監理委託契約書の内容を細部まで確認し、各社の責任範囲や業務内容が明確に記載されていることを確かめます。不明な点は必ず質問し、納得いくまで説明を求めましょう。

B. 設計段階での注意点

  • 配置計画の詳細な確認: 設計図面の中でも、特に建物の配置を示す図(配置図)については、敷地境界線や道路境界線との距離、隣接建物との関係、法的な規制線(壁面後退線、斜線制限など)が正確に明示されているかを確認します。
  • 法規遵守の確認: 設計が建築基準法や関連条例、民法の規定(例:隣地境界線から50cmの離隔)を全て満たしているか、建築士に説明を求めましょう。
  • 第三者による図面チェックの検討: 不安な場合は、契約している建築士とは別に、第三者の建築士や専門家に図面のチェックを依頼することも有効な手段です。

C. 工事着工前の最終確認

  • 境界の明示: 工事開始前に、土地家屋調査士によって敷地の境界が現地で明確に示されていることを確認します(境界標の設置など)。
  • 地縄張り(じなわばり)の確認: 基礎工事に着手する前に、設計図に基づいて建物の正確な位置と大きさを地面に縄やロープで示す「地縄張り」が行われます。この地縄が、設計図通りか、境界線から適切な距離が確保されているかを、可能であれば建築士や現場監督と共に現地で確認しましょう。この段階での確認が、初期の配置ミスを防ぐ上で極めて重要です。

D. 工事中の施主検査のポイント

施主様は建築の専門家ではありませんが、工事の進捗に関心を持ち、いくつかのポイントをチェックすることで、問題の早期発見に繋がる可能性があります。

  • 定期的な現場訪問: 施工業者に許可を得て、安全に配慮しながら定期的に現場を訪問し、工事の進捗状況を確認します。
  • 図面との照合: 特に基礎の配筋や型枠設置時、壁や柱の位置決め時など、建物の形状や配置に関わる重要な工程では、図面と現場の状況を照らし合わせてみることも有効です 。窓やドアの位置、大きさなども図面通りか確認しましょう 。
  • 境界付近の確認: 敷地境界を示す杭や目印が工事中に動かされたり、無視されたりしていないか注意を払いましょう 。
  • コミュニケーション: 現場監督や担当者と良好なコミュニケーションを保ち、疑問点や気になることがあれば遠慮なく質問しましょう。

施主検査の際には、図面、メジャー、カメラ、懐中電灯、水平器などを持参すると便利です 。 

E. 専門家による検査の活用

建築プロセスにおける重要な段階(例:基礎配筋完了時、上棟時、竣工時など)で、第三者の建築士やホームインスペクター(住宅診断士)による専門的な検査を依頼することも、品質確保とミス防止の観点から非常に有効です。

配置間違いの多くは、初期段階の小さな見落としや確認不足が原因です。施主様が建築プロセスに関心を持ち、積極的に情報収集や確認を行うこと、そして必要に応じて専門家の助けを借りることが、後々の大きなトラブルを防ぐための鍵となります。特に、工事が始まってしまうと修正が困難になるため、設計段階と工事着工前の確認は、時間と手間を惜しまず慎重に行うべきです。

9. まとめ – 専門家への早期相談が安心への第一歩

本記事では、建物の配置間違いや越境という、施主様にとって極めて深刻な問題について、その原因から法的な側面、裁判事例、そして曳家を含む様々な修正方法に至るまで、多角的に解説してまいりました。

建物の配置間違いは、測量ミス、設計ミス、施工ミスなど、建築プロセスの様々な段階で発生し得るものであり、一度発生するとその解決には建築基準法や民法といった法律知識、そして高度な専門技術が不可欠となります。特に、2020年4月施行の改正民法による「契約不適合責任」は、施主様の権利を理解する上で重要な概念です。

万が一、ご自身の建物に配置間違いや越境の疑いが生じた場合、あるいは既に問題が顕在化している場合には、決して一人で悩まず、できる限り早期に専門家へ相談することが、問題解決と安心への最も確実な第一歩です。

相談すべき専門家としては、以下のような方々が挙げられます。

  • 弁護士(建設・不動産紛争に詳しい): 法的な権利関係の整理、責任の所在の明確化、交渉や調停・訴訟の代理など、法的な側面から問題解決をサポートします 。
  • 建築士: 設計図の確認、建築基準法への適合性評価、技術的な是正方法の検討など、建築の専門家としての助言を提供します。
  • 土地家屋調査士: 正確な境界測量、越境の有無およびその程度の確定、登記関連の手続きなど、土地の境界に関する専門家です。
  • 曳家専門業者(例:五月女建設): 建物の移動による配置修正が選択肢となる場合、その技術的な実現可能性、工法、費用などについて具体的な提案を行います。

建物の配置に関するトラブルは、放置すればするほど問題が複雑化し、解決が困難になる傾向があります。また、法的な権利行使には期間制限が伴う場合もあります(例:契約不適合責任における1年以内の通知義務 )。早期に専門家の適切なアドバイスを受けることで、冷静に状況を把握し、最善の解決策を見出すことが可能になります。 

五月女建設では、曳家工事を通じて数多くの建物の配置問題を解決してきた実績とノウハウがございます。もし、建物の配置間違いでお困りの方、あるいは曳家という選択肢について詳しくお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にご相談ください。専門のスタッフが、お客様の状況を丁寧にお伺いし、最適な解決策をご提案させていただきます。皆様の大切な財産である住まいを守り、安心した生活を取り戻すためのお手伝いができれば幸いです。

曳家 Q&A 教えて曳家先生

建物の配置間違い、越境についてのQ&A

Q1: 「建物の配置間違い」や「越境」とは、具体的にどのような状態を指しますか?

A1: 「建物の配置間違い」とは、設計図で定められた正しい位置に建物が建てられていない状態を指します。一方、「越境」とは、ご自身の建物やその一部(屋根、外壁、基礎など)が、お隣の土地の境界線を越えてはみ出してしまっている状態を指します。たとえ数センチのはみ出しであっても、法的な紛争に発展する可能性がある深刻な問題です。


Q2: なぜ、建物の配置間違いや越境は起きてしまうのですか?

A2: 主な原因は一つではなく、複数の要因が重なって発生します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 測量時のミス: 土地の境界測量の誤り、建物の位置を示す「墨出し」作業のミス、古い測量機器の使用など。
  • 設計上のミス: 設計図自体が間違っている、建築基準法などの法規制を誤って解釈している。
  • 工事中のミス: 施工業者が設計図通りに工事をしなかった、現場の管理が不十分だった。
  • 境界の曖昧さ: 隣地との境界が元々不明確で、確認しないまま工事を進めてしまった。

Q3: 配置間違いが発覚した場合、誰が責任を負うことになるのでしょうか?

A3: 責任の所在は、その原因によって異なります。

  • 設計ミスが原因であれば設計者(建築士)
  • 施工ミスが原因であれば施工業者(建設会社) の責任が問われます。多くの場合、施主(発注者)と契約している元請け業者が、下請け業者のミスも含めて最終的な責任を負います。

Q4: 施主として、業者に対してどのようなことを法的に請求できますか?

A4: 2020年4月に改正された民法の「契約不適合責任」に基づき、施主は業者に対して以下の権利を行使できます。

  1. 追完請求: 建物を正しく直すこと(曳家による移動や一部解体など)を求める。
  2. 代金減額請求: 修補が行われない場合などに、代金の減額を求める。
  3. 損害賠償請求: 仮住まい費用や不動産価値の低下分などの損害の賠償を求める。
  4. 契約の解除: 問題が重大で、契約の目的が達成できない場合に契約を解除する。

注意点として、この権利を行使するためには、問題を知ってから1年以内に業者へ通知する必要があります。


Q5: 配置間違いを修正するには、どのような方法がありますか?

A5: 主に以下の5つの方法があり、状況に応じて最適なものを選択します。

  1. 現状容認と金銭解決: 軽微な越境の場合、隣地所有者の合意のもと、解決金を支払う。
  2. 部分的な解体・修正: はみ出した部分だけを解体・修正する。
  3. 全面的な解体と再建築: 全てを取り壊し、正しい位置に建て直す。
  4. 曳家(ひきや): 建物を解体せずにそのままの形でジャッキアップし、正しい位置へ移動させる。
  5. 土地の売買・分筆: 越境している部分の土地を買い取るなどして法的に解決する。

Q6: 修正方法の一つである「曳家(ひきや)」とは何ですか?どのようなメリットがありますか?

A6: 「曳家」とは、建物を解体することなく、そのままの状態で別の場所へ安全に移動させる専門技術です。配置間違いの修正において、非常に有効な選択肢となり得ます。主なメリットは以下の通りです。

  • コスト削減: 一般的に、建て替えに比べて費用を大幅に抑えられます(新築の4~7割程度が目安)。
  • 工期短縮: 建て替えよりも短い期間で工事が完了します。
  • 環境への配慮: 解体材などの廃棄物がほとんど出ないため、環境に優しいです。
  • 愛着の維持: 思い入れのある大切な家を、取り壊さずにそのまま残すことができます。

Q7: 施主として、配置間違いを未然に防ぐためにできることはありますか?

A7: はい、施主様ご自身がいくつかのポイントをチェックすることで、リスクを大幅に減らすことができます。特に重要なのは以下の点です。

  • 信頼できる専門家の選定: 実績や評判をよく調べてから、建築士や建設会社を選びましょう。
  • 契約・設計図の確認: 契約内容や図面(特に建物の位置を示す「配置図」)をよく確認し、不明点は必ず質問しましょう。
  • 「地縄張り」の立会い確認: 工事が始まる直前、地面に縄で建物の位置を示す「地縄張り」が行われます。この段階で、設計図通りか、境界から適切な距離が取れているかを現地で必ず確認することが、初期のミスを防ぐ上で極めて重要です。

Q8: もし、自分の家に配置間違いの疑いが生じたら、まず何をすべきですか?

A8: 決して一人で悩まず、できる限り早く専門家に相談することが、問題をこじらせず、安心して解決するための最も確実な第一歩です。相談すべき専門家には、以下のような方々がいます。

  • 弁護士: 法的な権利関係の整理や交渉をサポート。
  • 建築士: 技術的な観点から是正方法などをアドバイス。
  • 土地家屋調査士: 正確な境界を測量し、越境の有無を確定。
  • 曳家専門業者(例:五月女建設): 曳家による修正の実現可能性や費用について具体的に相談。

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五月女 紀士(そうとめ もとし)

五月女建設代表取締役、日本曳家協会常任理事、曳家指導士。1979年栃木県鹿沼市生まれ、栃木県鹿沼市在住。日本大学生産工学部土木工学科卒業。2003年に建設業の道に入り、土木作業、施工管理業務を経験したのち、2005年より五月女建設に入社、曳家業務に従事する。国指定有形文化財「真岡高校記念館」での曳家技術を活かした耐震改修工事では現場監督を務め、2018年に専務取締役、2020年に代表取締役に就任する。現在、「お客様の『想い』に寄り添い対等な関係を構築する」営業で、曳家工事において全国でもトップクラスの件数を受注している。曳家先生として、曳家技術や地盤沈下、大雨被害対策、古民家再生の解説・講演を行いつつ、大好きな仕事に励んでいる。3児の父、休日は山や川での犬散歩を喜びとしている。曳家工事の専門家。 Facebook  Instagram  Youtube

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